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移住者の声 vol.6 桝岡 未佳さん


出身地:大阪府枚方市
現住所:橿原市
移住年:2015年
職業:伝統食カフェ~楽膳~ 経営
家族構成:ご夫婦、お子さん一人

ご主人の実家に移住してカフェを開業

移住するまでは何をされていたのですか?

もともと大阪でエステの仕事をしていました。また子どもに関わるボランティア教室もしていて、その教室では毎年岡山県美作市でキャンプをしていたのですが、そこで現地の方との交流のあった主人に出会いました。主人は東京で働いていたので、結婚を機に東京に行くことになりました。東京は1年程いましたが、二人だけの生活では便利で良いところだと思いました。

なぜ奈良に移住してきたのですか?

妊娠がわかったとき、東京で子どもを育てていくイメージができなかったんです。東京に親戚などの身寄りもありませんでしたし、自然の中で子育てをしたいというのが二人の共通の考えでした。東京は便利な場所ですが、妊娠を機に考えが変わりました。

東京の産婦人科に行ったとき、出産ということについてお医者さんにあまり喜ばれなかったんです。東京は医療も発達しているだろうし産婦人科も充実していると思っていたんですが、里帰り出産の話をした途端、手のひらを変えたように「ここで生まないのであれば違うところで検査してほしい」という話を何軒かの病院でされました。そのときは「なんて産みにくい環境なんだ。こんなのでは産む気も失せる…」と思いましたね。

何軒か病院を探してようやく里帰り出産でも診てくれる病院を見つけました。奈良で産む場所を確保する必要があったので、主人の実家近くにある奈良医大に行ったら東京の病院とは全然対応が違いました。先生の包容力というか、出産に対しての受け入れが温かくて、「ここで産みたいなぁ」と思いました。

里帰り出産として出産だけを奈良でするのか、それとも奈良に移住するのかというのは、初めの頃の気持ちとしては半々でした。ただ、病院を転々としたこともあり、気持ちはだんだん奈良に傾いていって、結果として移住することになりました。

当時私がしていた仕事も、もともと育休の方の代替ポジションでしたが、その方がなかなか保育園に入れず復帰が遅れていたので、東京では育てにくいということをひしひしと感じました。もうこれは奈良に帰れってことなのかなと思いましたね(笑)。

移住されてきて、どういった経緯でカフェをやることになったのですか?

私というよりは、以前から主人がカフェをやるイメージがあったみたいです。もともとここは酒屋だったのですが、倉庫みたいに寂れていました。そこをカフェにしたいと言っていたので、「夢みたいなこと言っているわー」と思って聞いていました。

でも主人がカフェをしたいという想いはわかっていました。私はエステをやっていて、主人は整体をやっているのですが、何度か一緒にイベントをしていました。二人とも単にエステや整体をするだけでなく、来てもらったお客さんにご飯を食べてもらって、健康になってもらいたいという考えのもと、食を交えたイベントをしていました。そういうスタイルを毎日したいのだろうと思いましたね。それで、2015年3月に奈良に引っ越して、実家の改装を経て、4月に店をオープンしました。そしてその後、7月に出産と本当にバタバタの時期でしたね。

移住やお店を出すことに対する不安はありましたか?

もちろんありました。金銭的な面もそうですが、子どもがこれから生まれるという不安、生まれてきた後も育てながら自分のカフェをしないといけないという不安、不安だらけでした。でも目の前にきたらやるしかないと覚悟を決めました。

ご主人は、月のうちの半分ぐらいは東京など県外で働いていて、奈良にいないとお聞きしました。

妊婦のとき、カフェオープンまではずっと一緒にいてくれて、その後1週間いませんでした。もしその間に陣痛きたらどうしようとかは思っていました。でもそう言っても仕方ないので、どうやって一人で乗り越えていこうかと考えていました。「一人のときに何か起きたらどうするか」というシミュレーションを繰り返して強くなっていった感じですね(笑)。普通だったらそばに旦那さんがいるじゃないですか。でも私は常に一人でもできる準備を考えていました。いないことが当たり前のような環境を作っていったのかもしれないですね。

ただ、そう言いながらも頼っていますけどね。私が言わなくても、困るだろうということは先回りしてやっておいてくれるので助かっています。店をやっているから、出産後の準備とか手が回らないだろうと思って、あらかじめネットで買っておいてくれたりとか、友人に子ども用品を譲ってもらったりとか。家にいない間でも、いろんなことを考えてくれているのが伝わってきました。

まったく知らない土地だからこそ自由にさせてもらえた

移住して良かったことを教えてください。

移住してきたときは、村のことを全く知らなくて、知り合いもいない状態でした。だからこそ自由にさせてもらえたと思います。自分が知っている町だったら体裁を考えていたかもしれません。ありのままの自分で人と接し、お客様とも徐々に仲良くなっていっていきました。フレンドリーすぎて、困るときもありますが。朝から酒飲んで入ってくるお客さんもいますし(笑)。東京ではありえないぐらい、みんなフレンドリーですね。東京でご近所に挨拶まわりをしたら、「そんなんされたら困る」という方もおられて、同じ関西人ということもあるのか、親しみがあり、生活しやすいと思いました。

1か月に1回粗大ごみの日があるんですが、そこでたき火しているんですよ。他愛もない情報交換とか立ち話をしていて、「昔はこんなんやったんやろなぁ。いいなぁ」と思いました。移住するときには、自分のことをアピールする前に、地域の方が何を考えているのか、何を求めているのかという情報を知ることが大事だと思います。このカフェがまずは地域の方々に喜ばれる場にならないといけないとも思っていますので。そのためにもこういった立ち話ができる場があってよかったと思います。

逆に移住してみて困ったことありますか?

…ものすごく困ったことは、今のところはないです。

仕事と子育てと両方あって、バランスを取っている

子育てするのには大変ではなかったですか?

自分ひとりだったら行き詰っていたかもしれないですね。義母が近くにいてくれて助かっています。あと、カフェをやっていなかったら子育てに集中できるか、というと、私の性格的にはそうではないと思います。仕事と子育てと両方あって、バランスを取っているのかもしれないです。

このあたり(橿原市)では、子育て支援施設とか充実しているのですか?

子育て支援センターがあるのですが、私はまだ使ったことがないのでわかりません。うちのカフェで週に1回子育ての教室をしているので、ここのカフェにお母さんたちが集まってくれて、先生が来てくれるので、私が出歩けなくてもいろんな方にみてもらえるのはありがたいですね。

私と同じように大阪から奈良に移住してきて、同じぐらいの年の子どもをもった人がいるのですが、奈良にはあまり友達がおらず子どもと二人きりの時間が多かったので早く大阪に帰りたいと言っていました。でも一度カフェに来てもらって、話をしたり、ランチをしたりすると表情が変わっていました。

新しい場所に移動するとき、その人の居心地のいい場所を創ることができると生活しやすいと思います。もちろんその土地のスタイルはあるけれど、どこにいったとしても、自分のスタイルでうまく融合して、自分が好きな場を作っていければよいと思うのです。私の場合は、居心地の良い場所がカフェです。カフェは人が出入りするから、その分私の気も晴れているのかなと思います。

移住を考えている方へのメッセージをお願いします。

移住は、大変だと思うと大変ですけど、楽しいと思うと楽しいものになります。移住するのは大変なこともあるのですが、そういうことをも楽しんでいるとそこから道が開けてくるので、自分の気持ちや考え方次第だと思います。

みんなから「赤ちゃん育てながら大変でしょー」とよく言われます。たしかに大変は大変なんですけど、でも良い面もあります。カフェに来てくれる人みんなで子どもを見てくれます。それは子どもにとってものすごくプラスになっています。大人になったときに、人見知りしないと思いますし、人が好きな子に育っていくだろうと思います。悪いこともあれば良いこともあるので、いろいろ視野を広げてみると、心を豊かにしてくれるいろんな宝物が発掘できると思いますね。


written by
中島 章

東京で人材サービス会社・コンサルティング会社で働いた後、地元奈良へ移住。奈良移住計画を立ち上げ、移住者を応援する活動をしている。