奈良に移住してゲストハウスを作る
仕事はいくつかやってきたのですが、主に東京で接客に関する仕事に携わっていました。29歳のときに行った海外旅行をきっかけにイタリア語に興味を持ち、日本でイタリア語の勉強を続け、36歳の時にイタリア留学に行きました。日本に帰ってきてからは東京に通っていた生活とは違うライフスタイルをしたいという想いもあり、お勧めされた場所として和歌山県南紀白浜の宿泊施設で働くことになりました。
白浜で働いていたあるとき、「大阪や京都にも行ってみよう。あっ、そういえば奈良ってあったぁ」と思って、京都で1泊する予定を変更して奈良に泊まることにしました。そのとき奈良日和りというゲストハウスに泊まったのですが、そこのオーナーさんに気に入られて、熱烈なお誘いをいただき、秋や春の行楽シーズンだけ奈良のゲストハウスで働くことになりました。その間、「ゲストハウスやらないの?」という声もあり、2015年春にゲストハウスをやることを決断しました。
宿泊業として働いていたのは3か所あったのですが、魅力的で素敵な方たちにたくさん出会えた奈良でやろうと決めました。やはり仲間が多いほうが立ち上げるのに心強いですし、実際に皆の協力なしではオープン出来なかったと思うくらい皆さんに助けられました。
あと、奈良は時間の流れが良いと思います。奈良には街があり、そこから歩いて行ける範囲で公園や自然があり、そこに歴史的建造物もあり、都会過ぎずとても過ごしやすい場所だと思いました。スローな感じが海外の中小都市を思い出させ、それも私にとって奈良の魅力の一つなんだと思います。
不動産屋さんには「1、2年探す方もいる」ということは言われていました。当時、奈良以外の選択肢は考えられなかったので、とにかく探すしかないと思っていました。ただ、結果的には奈良町家バンクに登録されているこの物件がすぐ見つかりました。他には不動産屋さんで2件見たので、合計で3件しか見ていないです。周りからは「もっといろいろな物件を見た方がよい」と言われましたが、ここに一目ぼれですね。この物件を紹介してもらえたのもそうですが、利用できる助成金の話などをいただけたことも含め、町家バンクの担当者さんには本当にお世話になりました。
友人の紹介で自然と繋がっていく
ゲストハウスをやる場所としては、知り合いの人数が多いことが重要でした。以前働いていたゲストハウスでの繋がりもありますが、奈良のまちは狭いので友人の紹介などで自然と繋がっていくのが良いですね。
あとは、ゆったりとした感じがいいですね。ガツガツしていなくて、頑張らなくてもよい感じ。例えば奈良の店は閉まる時間も早いです。その分早くゲストハウスに帰ってくるので、ゲストとゆっくりお話ができます。これが例えば京都だったら、22時でも普通に開いている店が多いので、ゲストとゆっくり話すことはできないと思うのです。そんなことも影響してか、最近、連泊していくお客さんが多いです。1泊で予約を取っていても、奈良に来てから3泊になることも結構あります。
先ほど良かったことで「ゆったりしたところが良い」と言いましたが、店が早く閉まることが街として、観光として良いことなのかどうかはわからないとも思います。やはり観光地としてもう少し頑張ってほしいなと思うところはあります。
あと、ネットでの買い物が増えちゃいました(笑)。今はゲストハウスの仕事があって、うまく時間が作れていないということもあるのですが、買い物がちょっと不便かなと思います。ここは近鉄奈良駅からも近いし、車はなくても大丈夫かなと思ったのですが、まとめて買い物をしたいときなど車があった方がよいですね。
たしかにそうかも。今度使ってみます(笑)。少し車で行けば良い景色を眺められたりするので、そういう意味でも車はあるとよいですね。
私は宿泊業の仕事をやってきて、大変だと思ったことはありますが、嫌だとおもったことはありません。だからこの仕事が向いているのだと思います。 日本でも海外でも旅先で出会った人々に良くしてもらったり助けてもらったり、仲良くなったことが多々あり、それが後々も旅の良き思い出となります。今は受け入れる側として奈良に来てもらった方々に少しでも心に残る思い出を作ってほしいと思い、微力ですが何かお手伝いが出来たらいいなと思います。また、ゲストからたくさんの思い出を頂いているのも事実です。まるで毎日プレゼントを頂いているようです。
余談ですが、古民家を改修して、再生したことによって、大家さんがとても喜んでくれました。「こんなに良くしてくれてありがとう!」と言っていただきました。うちがきっかけで大家さんがやる気になって他の物件の改修工事もされていると聞いて嬉しくなりました。
東京で人材サービス会社・コンサルティング会社で働いた後、地元奈良へ移住。奈良移住計画を立ち上げ、移住者を応援する活動をしている。