【求人】伝統的な暮らしを守り、伝える仕事
移住者の声「面白そうなことに手を出して自分に正直に生きる」
2017年4月21日
A New Discovery in NARA
2017年6月18日

奈良町宿 紀寺の家

紀寺の家スタッフ
奈良市


こちらの求人募集は終了いたしました。

近鉄奈良駅から、昔ながらの町並みが残るならまちを歩くことおよそ20分。 そこに築約100年の町家を改修した一戸貸しの宿、奈良町宿「紀寺の家」があります。 今回はその紀寺の家の運営スタッフを募集します。

そう言うと、宿泊関係の経験がある人や、宿泊施設での仕事を希望されている人に向けた求人情報のように聞こえるかもしれません。

たしかに“奈良町宿”という名のとおり、紀寺の家は宿泊施設なのですが、紀寺の家では、ホテルや旅館等の宿泊施設で働いたことがある方は一人もいません。更に言うと、宿泊施設で働くことを想像もしていなかった人が、縁あって入社することになり今一緒に紀寺の家を創り上げているのです。

にわかに信じがたいのですが、一般的な宿泊施設の考え方との違いを知るとそれも納得していただけるのかもしれません。

では、何が違うのでしょうか? 紀寺の家代表の藤岡俊平さんに創業当時のお話から聞いていきます。

奈良市のならまち・きたまちエリアでは、月に1軒程という凄まじいペースで伝統的な家が取り壊されています。この紀寺の家の建物一帯も、もともとは取り壊される予定でした。「この場所は私の実家から近く、昔キャッチボールをしていた思い出の場所でした。取り壊されることを聞いたとき、僕らに何かできることはないか、僕らがやるからこそできることをやりたいと考えました。」

俊平さんの父親は、伝統的な建物を今の暮らしに合わせて改修する専門の建築家で、俊平さんも父親の下、建築の仕事をしていました。 「僕らが直しているのは主に家です。家を中まで見てもらう機会はあまりないため、どういう風に伝統的な家を直せばいいかということは、実はあまり知られていないと思いました。それをもっと知ってもらうべきだと思い、考えたのが、”伝統的な家のモデルハウス”です。」

新築の一戸建てでは当たり前となっているモデルハウスですが、本当にモデルハウスとしてやろうと思うと、維持するだけで費用がかさみます。そこで、実際に1日体験してもらう宿泊施設とすることを考えたのが、紀寺の家の始まりです。

改めて伝統的な家の良さを俊平さんに聞いてみました。 「伝統的な家の良さは、自然に近いところで暮らすことできること。風が吹くと木製の建具のカタカタとした音が聞こえる、鳥のさえずりが聞こえる、雨の音が聞こえる、建具を開けると雨の香りを感じる、太陽の光が入ってきて温かさを感じる、そういった自然を感じることができるのが、伝統的な家の魅力です。」 「また、建築的な話をすると、伝統的な家は自然素材でできており、伝統的工法により50-80年でリノベーションすることで残すことができます。お寺が何百年と持っているのと同じ方法で、繋いでいくことができる良さがあります。」

ただ、伝統的な家にはメリットもあればデメリットもあります。 「たとえば、昔ながらの家は冬寒いとか、いろんなデメリットはあります。ただ、僕らがリノベーションすることでデメリットを減らすことはでき、逆に新築では味わえないものを足すことができます。デメリットを我慢せず、一つ一つ問題解決をしていくことで、現代でも快適に暮らすことができることを知ってもらいたいです。」

それを体現するように、紀寺の宿では、伝統的な建物でありながら、寝具は布団にはこだわらず、ベッドを入れており、土間には床暖房を入れています。

なぜそこまで伝統的な建物を残すことにこだわるのでしょうか? 「ヨーロッパでは町の個性に皆誇りを持っています。例えばイタリアでは、フィレンツェはオレンジ色の町が広がっていて、ベネチアは水の上に町がある。アルベロベッロはキノコの形をした可愛い家があり、マテーラは洞窟住居がある、というように地域によって町の雰囲気がまったく違います。イタリアの人はその町の個性に誇りを持って今も住んでいるのです。」

「では日本ではどうか?実は、日本でも地域によって全然違います。わかりやすいところで言えば、岐阜県の白川郷には合掌造りがあり、奈良や京都には町家があります。なぜ地域によって違うかというと、それぞれに意味があって、白川郷の場合は、雪深い町なので雪がちゃんと落ちるように傾斜をつけています。また、冬の間、雪が降るのでその間の産業として蚕を育てるために、屋根に大きな空間を作りそこで蚕を育てたという歴史があります。その場所での営みや生活が家の建て方に表れ、その場所に暮らす人たちが同じような建物を建てることで町の個性になるのです。」

「日本でも個性のある家はたくさんありますが、誇りを持っている町というとすごく少ない。町の個性を残していくためには、伝統的な建物を残さないといけないと思うんです。建物は、長い歴史や、はぐくまれてきた文化によって出来上がっているものなので、建物を壊すのはすごく簡単だけど、作り上げるのは2-3年でできるものではありません。」

紀寺の家にとっては、「伝統的な建物を守る」ということが大切な考え方なのです。守るというのは単に「保存」という意味ではなく、伝統的な家での暮らしを多くの方に知ってもらい、町家に住みたいと思ってもらうことこそが、伝統的な建物を守ることに繋がります。その考え方こそが一般的な宿泊施設との大きな違いであると言えます。

紀寺の家では、仕事の仕方に関しても特徴があります。調理や接客など職種別に分かれておらず、スタッフは全員、紀寺の家の運営に関わるすべての仕事をします。 「朝は朝食作りから始まって、食器を洗う、チェックアウトする、掃除する、次のお客さまを迎える準備をする、チェックインする、次の日の準備・仕込みをする…、といった一連の業務があります。その日の担当が決まっていて、1~2週間ごとに変わります。スタッフみんなが掃除も洗濯も調理も接客も全部できるという仕事のやり方をしています。」

すべての仕事というのは、宿泊業務だけにとどまりません。 毎日ブログを発信するのも、年賀状やポストカードをデザインするのも、スタッフの手によってされています。もちろんこれまでに関連する経験がないからといって、億劫になる必要はありません。一眼レフの持ち方から丁寧に教えていただけます。

「やることによって初めてわかることがあると思います。例えばポストカードを作ったことがなければ、素敵なポストカードを見ても『素敵だなぁ』で終わるかもしれませんが、一度苦労して作っていると、『これは流石だな、こうやって作るといいのか』と勉強になる。」

「ブログに関しても、実は自分たちのためにやっているところがあります。ブログを見てもらって、いろんな方に奈良に来てもらいたいという思いはあるものの、それがすべてではありません。ブログをやることによって、半ば強制的に季節の移り変わりや自然の表情に目を向けることができます。そして美しく思うものを写真として美しく撮る技術と、それを言葉にする技術、この2つの技術についてブログを通して磨くことができるので、みんなにやってもらっています。」

参考:紀寺の家ブログ

その他にも年間を通して様々なイベントがあります。 紀寺の家で田んぼを借りているので、初夏には全員で田植えも行います。このときは友人にも協力してもらって、1本1本手植えで植えていきます。

また冬には、1週間かけて建物の大掃除をします。天井の埃を落とすところから始まり、床にワックスを掛けたり、カーテン洗ったり。1週間営業を休んで大掃除を行うというのは、他の宿泊施設ではあまりないのではないでしょうか。短期的な収益を目指すのではなく、家に愛着を持って付き合っているからこそ、大切にしている年中行事です。

いろんな”お仕事”を紹介しましたが、これらはすべて紀寺の家を創る上で大切な仕事であり、また、伝統的な家での暮らし方を創る上で大切な仕事なのです。

実際に働くスタッフの方にも話を聞いてみました。

約2年前に入社し、現在では現場責任者の井岡友美さん。 友美さんは、大学卒業して営業職として働いたのち、服飾の仕事をしていました。今後の将来を考えて仕事イベントに参加していたとき、偶然にも俊平さんと会うことになり、紀寺の家で働くことになりました。

今まで宿泊業をすることは考えていなかったのに、俊平さんの考え方に共感してここに来たと言います。 「私は奈良県民ですが、伝統的な建物とか町家は観光地だけの話だと思っていました。歴史とか全然知らなくて、私にとっては俊平さんの話が逆に新鮮でした。話を聞いて、伝統的な家を残すことは大切なことだと思いましたし、自分が働くことで少しでも伝統的な家を守ることに参加できたらいいなと思いました。」

実際に働いてみた感想を聞いてみました。 入った当初は、掃除・調理・接客と内容が多岐に及ぶ中、現場の雰囲気や先輩のスキルに驚いて、「私はここでやっていけるのだろうか」と思ったといいます。

「ものすごいスピードで多くのことをこなしているのに、素敵な女性らしさを感じる接客をされていました。そんな先輩に憧れる思いと、そんな風になれるのかという不安の両方がありました。入って1年間は”もがく1年”でした。勤務時間が長い上に、ブログを更新したり、デザインの仕事があったり、新しいアイデアを出したり。宿の仕事のほか、感性を要する仕事があるので、その2つを妥協せずにすべて全力でやることが必要です。」

スタッフが全部の仕事をできるようにするということは、それだけ負荷が大きい仕事であるともいえます。ただ、そんな働き方ならではの良さがあると友美さんは言います。「調理側を知っているからこそ接客している中で料理の説明も自然とできるし、掃除をしているからこそ家の扱い方がわかります。町家に対する愛着もわくし、変化にも敏感になれる。だから全部やるという環境は恵まれていると思います。」

「お客さまに対して『お米は私たちが田んぼに植えたものなんです』と言えるんです。それが美味しいと言ってもらえるとすごく嬉しい。もちろん褒められるためにやっているわけではないのですが、自分でやったことを認めてもらえるのは素直に嬉しいですね。」

町家での暮らしをわかっているからこそ自然とお客さまとのコミュニケーションがとれていくのだと思いました。

更に友美さんは言います。 「働く環境は恵まれていると思います。みんなで意見を出し合って、納得いくまで話し合い、一番いい意見を採用しようという考えの職場です。どのように問題を解決していくのか勉強になります。」

俊平さんは加えて言います。 「一番いい答えになるのは、目指しているもの、つまり『伝統的な家を残すために素敵だと思う暮らしを作っていくためにはどうすればよいか』という軸が決まっているからこそできているのだと思います。軸がある中で、答えはどんどん進化していくと思いますので、これからもみんなの意見を大切にしながら進めていきたいです。」

紀寺の家には、朝礼・夕礼のほか、週単位、月単位でミーティングの場が設けられています。「誰かがミスしたことは、全員ミスをする可能性がある」という考えのもと、スタッフ一丸となって日々改善活動を進めています。

友美さんが入社して数か月たった頃、制服をモデルチェンジする話がありました。服飾会社での経験を活かしてデザインから縫製まで友美さんが担当し、スタッフみんなの意見を集めながら作られたそうです。実はその制服の評判が良好で、今年から一般向けに販売される予定とのこと。

「まさか縫製の技術が生かせるとは思ってもみなかったです。」と友美さんは話します。

「もちろん宿泊施設としての仕事があるのでそれをやりながらになりますが、その人の得意分野を活かして紀寺の家を一緒に創ることができると思います。そんな楽しみ方ができる方に応募してもらいたいと思います。」と俊平さんが付け加えました。

昨年にはならまちの町家に引っ越してきた友美さん。今では、仕事でも家でも、伝統的な家に暮らすようになりました。

実は、紀寺の家のスタッフは、友美さん以外も皆、ならまち近隣の伝統的な家に住んでいるというから驚きです。紀寺の家で働くために埼玉や大阪から移住してきた方もいます。伝統的な家に住んでいることが採用条件になっているわけではありませんが、「伝統的な家を残していきたい」という考え方は重要です。

「町家に暮らしたいと思わせるのが僕らの仕事です。誰も汚い家に住みたいとは思わないでしょう。だから掃除が大切なのです。しつらえも同じで、どの場所に何があるのがよいのか、すべて考えることが大切です。みんなで考えていき、常に進化させていくのが僕らの仕事だと思っています。」

今回の募集では契約社員になりますが、2年目以降から正社員として活躍していただく事を考えています。

「入社してから初めの1年は紀寺の家の”型”を覚えてもらう1年です。紀寺の家を知ってもらったうえで、2年目以降は、紀寺の家を成長させてもらいたい。成長させるのが正社員の仕事です」と俊平さん。

雇う・雇われるの関係ではなく、みんなの個性を出し合って良いものを創っていきたい。そんな想いが伝わってきました。 今回、紀寺の家を取材させていただいて、スタッフの方々はどこか家族のような関係性に思えました。全員下の名前で呼んでいるからなのかもしれません。今回はその雰囲気をお伝えしたいと思い、敢えてスタッフの方のお名前を下の名前で書かせていただきました。

(文/中島 章  写真/林 雅志 ※一部、紀寺の家提供の写真含む)

奈良町宿 紀寺の家 求人募集要項

企業名・団体名奈良町宿 紀寺の家
募集職種紀寺の家スタッフ
雇用形態契約社員
※2年目以降、半年毎に正社員への昇級試験あり
給与契約社員 月給150,000円〜
正社員  月給170,000円〜
福利厚生・保険(健康保険、雇用保険)
・年金(厚生年金)
仕事内容・町家一戸貸し宿泊施設における全ての業務
接客、掃除、調理、しつらえ、農作業、デザイン、企画等
勤務地奈良県奈良市
勤務時間6:30~21:00のシフト制
1時間の休憩あり
休日休暇・月6日
・リフレッシュ休暇年2回
求める人物像・私たちの目的に共感し、紀寺の家を一緒に創り上げる方
採用予定人数1~2名
選考プロセスまずは下記よりご応募・お問合せください
※登録いただいたメールアドレスに、メールにてエントリーシートを添付いたします。
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エントリーシート送付
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書類選考
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面接
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採用(1ヶ月間、アルバイト期間あり)

・次の選考ステップに進まれる方のみご連絡させていただきます。
・取得した個人情報は、採用選考にのみ使用します。
・選考プロセスは変更になる可能性があります。
・不採用理由についての問い合わせにはお答えできませんのでご了承ください。
その他奈良町宿 紀寺の家 Webサイト
日本仕事百科の求人記事
※日本仕事百科にも同じお仕事が紹介されています。併せてご覧ください。


 
written by
中島 章

東京で人材サービス会社・コンサルティング会社で働いた後、地元奈良へ移住。奈良移住計画を立ち上げ、移住者を応援する活動をしている。