移住者の声「友人関係を“断舎利”することで、家族と向き合えた」
移住者の声「田舎も好きなんですが、街も好きなんです」
2015年11月23日
移住者の声「一度離れて、ゆっくりできる空気や人が見えるようになった」
2016年2月28日

移住者の声 vol.4 杉山 拓次さん


出身地:東京都多摩市出身
現住所:奈良市(新興住宅地)
移住年:2014年
家族構成:ご夫婦、お子さんお二人(5歳、8歳)

子育て環境を求めて移住

奈良に移住したきっかけを教えてください。

子どもができてから、「子育てをする上で東京にずっと住むのはどうなのか」というような話を夫婦でよくしていました。そんな話をしている中で起きたのが、東日本大震災でした。震災後、このまま東京で住み続けることに不安になったことが、移住の大きなきっかけになりました。また、ちょうど上の子が小学校に上がるタイミングだったということもあり、移住の決断をしました。

妻の実家が奈良市にあり、私も何度も行ったこともあるので、自然と奈良への移住に決まりました。なぜか、私も妻も「行ったらなんとかなるでしょ」と考えており、私も「10年間働いたし、一度場所を変えてみよう」という気持ちで移住しました。「大きな決断をそんな軽い気持ちでいいのか」と今でも思いますが(笑)。2人とも東京ではないところの暮らしを具体的にイメージできていませんでしたが、奈良には頻繁に帰ってきていたので、のんびりした雰囲気がいいなぁと思っていました。うちの子どもはアレルギーを持っていたので、子どもを育てるということを考えると、奈良の方がいいんじゃないかと思いました。

仕事はなんとかなるか。ただ現実は・・・

仕事は変えてもいいと思っていたのですか?

「自分は何がしたいのか」ということを考えていました。食べ物屋さん、カフェなどを考えましたが、どれも具体的にならず。自分自身が何をやりたいかというのはわかりませんでした。そこでNPO法人ETIC.主催の「好きなまちで仕事を創るin奈良(以下、好きまち)」というプログラムに参加して、まずは奈良での繋がりを作ろうと思いました。人の繋がりを作っていくなかで、自分のやりたいことが見えてくるのではないかと思いまして。

そして、これまで自分がやってきたこと、バックグラウンドを見つめ直しました。以前、俳優を目指して芝居、演劇をやっていましたが、「誰かに何かを伝える」ということがやりたいことだと気づきました。「奈良の自然を伝える」という仕事が、自分のやりたいことだと納得できました。前職が環境関係でしたので、エコツアーやエコツーリズムは一つの候補として考えていたものの、「でもそれじゃ食っていけないし」と思って諦めていましたが、それをちゃんと考えられるようになりました。

就職活動は奈良にこだわっていました。今でも妻に言われるのですが、奈良にこだわりすぎていた節はあります。正直な話、「奈良で就職をしよう」と考えると、なかなか自分のやりたいことにマッチする仕事は難しいなぁと感じました。求人は結構あるのですが、給与などの待遇面は大阪に比べると違います。大阪は通勤圏で通えてしまうので悩ましいですね。でもせっかく奈良に来たのだから、マッチした仕事がないのであれば作ろうかと、考えています。それは、ここ1年ほどでより強く実感しています。

今は「春日山原始林を未来へつなぐ会」というところでエコツアーなどの仕事をしているのですが、仕事をするきっかけは、好きまちのときに環境系NPOへヒアリングしに行ったことでした。そのときに「組織ができるかもしれない」という話を聞き、その後連絡があって団体の立ち上げから関わることになりました。

そういう意味では、自分から行動して道が開けたのですね。

実は、私は自分から動くのが億劫で、ビビリなんです(笑)。でも好きまちに参加して、人の繋がりができてきて、アクションを起こせば、何かしらのことが起きるのだなぁと感じました。前職で10年間働いていたときには、基本的に与えられたことに対するアクションなので、それとは全然違う経験になったと思います。

のんびりした雰囲気。空が広く、ゆっくりとした時間が流れている

移住されてみてどうですか?

移住して良かったと思うのは、のんびりしたところ。人も、空気ものんびりしています。高い建物がないから、空が広く、ゆっくりとした時間が流れています。

以前住んでいたのは東京の郊外でしたが、空を見て全部「空」ということはない。どこかにマンションが入ったり、ビルが入ったりしてしまう。もちろん河川敷に行けばあるのですが、それが駅前でも感じられるというのは、自然を身近に感じることができて落ち着きます。自分にとっては自然を感じられるってことがものすごく重要なんですね。

あとは、職場が近いので通勤が楽です。今はたまに自転車で通っていますが、通勤に1時間とか考えられない。満員電車が懐かしいですね。

僕はもともと関西出身でないから、京都も大阪もよく知らず、行っても落ち着かないですね。奈良に来て1年以上たちましたが、合計で20回も行っていません。妻は用事をつけて大阪・京都に行くのですが、僕はほぼ奈良で済ませちゃっています。もともと一般的な物欲があまりない方なのですが、服はネットでも買えますし、山関連のものやキャンプ用品は奈良で買えるので、大阪・京都に行く必要がありません。逆に友達が作った服などの本当に欲しいものは、大阪・京都でも買うことはできません。

移住されて困ったことなどありますか?

東京の友達に気軽に会えないのを実感してすこし寂しいと思うときはあります。ただ、どこに住んでいたとしても、家族ができると会社の同僚以外で友達と会う機会は少なくなります。仲のよい友達と会うのも何カ月に1回という頻度になります。だったら東京だろうが奈良だろうがそんなに変わりません。新幹線で3時間ぐらいで行けるんだったらいいかなと思いました。年齢を重ねるごとに、どんどん友達よりも家族の比重が重くなります。特にうちは子育て期なので余計にそうなのですが、この時期に家族よりも友達をとってしまうと家族が破綻してしまいます。逆に休日、よっぽど行きたい催しがない限りは、家族と向き合えるというのは、メリハリが利くのでいいかなと思います。そこのバランスが結構難しいと思うのですが。

友人関係を“断舎利”することで、家族と向き合えた

うちは5歳と8歳の男の子なので、お父さんと遊びたいと思うんです。自分の子どもの頃は父親と遊ぶという経験がほぼなかったので、自分の子どもには経験をさせてあげたいなと思っています。友人関係を“断舎利”して、こっち(奈良)にきて家族に向き合えたっていうのは、本当によかったです。そしてこっちにきて、新たな繋がりが出来てきて、無理のない範囲で関わることができてきたのでよいかなと。

どうやって繋がりを作っていったのですか?

NPOセンターでやっていたソーシャルビジネスカフェなど、意識的に人が集まるところに行きました。面白い人たちが集まっていて、そこで知り合いになったというのが大きかったです。奈良は世間が狭いので、「この人とこの人は知り合い」という感じで、繋がっていきます。

特に子育て世代には車は必需品。車で行動範囲がグッと広がる

想像していなかったことは?

車が結構多いことですね。最初は近鉄奈良駅界隈に住もうかなと思って探していましたが、道幅がそう広くない道なのに結構車通りが多いじゃないですか。子育てをするうえで、道幅が狭いことと車の量が多いのはちょっと怖いので、道路が整ったニュータウンのエリアにしました。自分もニュータウン育ちなので、団地の整った感じが懐かしい感じでよかったです。また、団地だと子どもたちがまとまっていて、常に誰かの目がある安心感もありました。

あと注意しないといけないのは、車がないとどうしようもないということ。これは地方に住むのだったら仕方ないのかもしれないですが。最初何カ月かは車なしの生活だったんですが、行動範囲が限られますね。ただ、逆に車を買ったら行くことができる自然がいっぱいあります。良くも悪くも車に頼り切りになってしまうので、維持費・諸経費などそれなりに覚悟が必要かなと思います。

最後にメッセージをお願いします。

住むことだけを考えれば、奈良は暮らしやすいまちだと思います。すごく都会が好きな人には向かないかもしれないですが、家族と暮らすまちとしては過ごしやすい。ちょっと行けば自然があるところで子育てができるのはいいなぁと思いますね。

ただ、奈良で仕事を見つけようとする人は注意してください。やりたいことがある人であればよいと思います。


 
written by
中島 章

東京で人材サービス会社・コンサルティング会社で働いた後、地元奈良へ移住。奈良移住計画を立ち上げ、移住者を応援する活動をしている。